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私たちの技術

2019年08月03日

3Dエアブラスト

さかなだマートが機械の設計から取り組んで開発した、3Dエアブラスト凍結法の説明です。

エアブラストとは、直接冷風を吹き付けて素早く凍らせる技術です。そして3Dは立体的にあらゆる角度から冷風を当てるという意味です。

この2つの技術を合わせた凍結法が3Dエアブラストとなり、凍らせる対象に、立体的に冷風を吹き付けて、いずれの凍結法よりもムラなく素早く凍らせるという技法です。

3Dだけでは弱く、強風を多面的に当てることにより、凍らせるスピードが早くなります。また、通常のエアブラストは一方面から吹き付ける技術ですので、これだと製品の凍結部分にムラが出来ます。

多くは何か利点が出来ると欠点も生まれるものですが、2つの技術を併せ持つことにより、欠点のない技術が生み出されました。さかなだマートが創造した、世界で初めての技術です。

魚を素早く凍らせることにより、細胞に傷が付くことなく凍らせることができ、解凍時も細胞がしっかりしているのでドリップが出ません。また、魚のエネルギーさえも閉じ込めますから、解凍時、魚の細胞が収縮します。

すなわち、捕れたての生のように歯ごたえが蘇るわけです。

 

2017年10月22日

一作日、醤油麹と塩麹が完成しました。22日に撮影しましたが、その後変化が無かったので、22日で完成としています。約10日間かかりましたが、夏場だともう少し早く出来たのかなと思います。漬けた当初よりかなりとろみが出て、旨味が増したように思います。今は密閉容器に移し冷蔵保管中です。以前から自宅で作っていた社員から聞くところによると、冷蔵保管で半年くらい持つようです。これで完成ですので、次は鮭とば作りに取り掛かりたいと考えています。

 

2017年10月22日

醤油麹と塩麹、10日目の写真です。まぜるレードル(おたま)が重くなるほどになりました。

醤油麹10日目

写真の比較では少しわかりづらいかもしれませんが、10日目、かなりとろみが出ました。

塩麹10日目

塩麹も10日目、かなりとろみが出ました。これで完成です。次は実際、鮭を漬け込んで鮭とば作りに入りたいと思います。

 

2017年10月17日

醤油麹と塩麹を漬けて5日目。少しとろみが出てきたようです。一日一度かきまぜています。

醤油麹

色がわかりやすいように、撮影時、日光に当てて撮っています。夏だと、目安として7日~10日、冬ですと10日~14日程度寝かせます。

塩麹4日目

塩麹も5日目で少しとろみが出てきました。

 

2017年10月13日

醤油麹と塩麹

下の写真は醤油麹作り、初日の写真です。まずは麹だけを手で揉んだあと、醤油を同割いれて更に手揉みします。

醤油と麹を合わせたところ

下の写真は二日目の様子。まだほとんど変化はありません。室温は20度程度。北海道は気温がぐんと下がったので、部屋の中に置いています。

醤油麹作り2日目

下の写真は混ぜたところ。

醤油麹を混ぜたところ

 

下の写真は塩、麹、水を合わせた塩こうじ作り初日の様子。こちらも同じように手揉みしたあと、塩、水を入れて更に手揉みします。

塩麹作り初日

下の写真は二日目。こちらも初日との差は認められませんでした。

塩麹作り2日目

 

2017年9月04日

ブリ、ドレスの熟成結果

8月30日に水揚げしたブリ、ドレス(頭、内臓無し)の熟成結果です。今日で熟成5日目でしたが、結論から言うと、予想以上に良い出来でした。酸味も8割方無くなり、脂の旨みも予想以上に熟成して美味でした。

2枚卸にした熟成ブリの写真

上の写真は、頭、内臓無し状態のブリを2枚に卸したものです。上側の身に付いている骨を外すと3枚卸になります。空気に触れていたお腹あたりが一部変色しています。ただ、卸した切り口に変色はありません。

熟成ブリ5枚卸の写真

先ほどのブリからカマを切り取り、フィレを更に中央で縦にカットして5枚卸にしました。変色した部分を取り除くと綺麗な色のフィレになりました。変色した部分は皮一枚で取り除いたため、歩留まりはほぼ計算に入れなくて良いくらいです。

※歩留まりとは、例えば原魚から頭や内臓、骨、皮など取り除いて最終仕上がった重量との比率。原魚が1kgで、最終仕上がりが600gであれば、6割となります。原魚を500円/kgで買った場合、6割だと、最終仕上がりのフィレは、500÷0.6=833円/kgとなります。

この状態で、エアブラスト急速冷凍機にかけ、超急速冷凍します。凍ったら、酸化を防ぐため、真空包装します。

飲食店に着いたら、解凍しますが、さかなだマートで5日間熟成していますから、この解凍した日から6日目、7日目とカウントすれば良いでしょう。原魚に近いドレス状態を冷凍保管するのは難しいと言われる方も居られるでしょうから、この大きさまでコンパクトに仕上げておくと、ほぼ大丈夫だと思います。

 

2017年9月02日

ブリの熟成結果

ブリ水揚げから8日目まで1日ごとに試食しました。日を追うごとに酸味が消え、まろやかさと旨みが乗り、深みが出ました。柵にしてキッチンペーパーにくるんで、1度の温度でテストしました。4日目に若干変色があり、6日目から表面変色が急速に始まり、変色した表面を削ぎ落し、綺麗な色の部分を味見するという方法です。

熟成6日目のブリ写真

 熟成6日目のブリ

4日目くらいから旨みが急速に増し始め、身質は若干柔らかくなります。ただ、それでも寿司ネタに使うには少し硬めかなという身質です。その後も少しずつ旨みが増し、酸味がかなり消えていくのですが、驚いたのは8日目の味でした。7日目の味とは違い、ここまで寝かせて「熟成」なんだというような、熟成特有(魚の熟成はこうではないかという推測)の味に変化したのです。

温度管理と湿度管理がしっかりしていないとここまで寝かせることは出来ないと思います。また、ラップに包んで寝かせるよりも、キッチンペーパーでくるんで日々取り換えながら、素材を呼吸させながら寝かせたほうが良いと感じました。

また、酸化した余分な水分を吸収しながら寝かせることによって、酸化の嫌味が身に沁み込みません。もう一つの利点は、ゆっくり水分を蒸発させてくれるので、魚の腰を保つことができ、旨みも増します。これは一夜干しの原理ですね。

そして今回作っているのは、ドレス状態(頭、内臓除去)で寝かせる方法です。これですと、柵より身を削ぐ量が少なくなるからです。(空気に触れる表面積が少なくなる)。

今日で3日目、月曜日(5日目)にフィレにする予定です。ドレス状態ですと、飲食店で寝かせるにはあまりにもスペースが大きくなり難しくなりますので、さかなだマートのほうで5日目まで熟成し、フィレにカットしてその後飲食店の冷蔵庫で寝かせることが出来るようにしています。どれくらい寝かせるかは、各店の好みにもよると思いますので。

 

生牡蠣瞬間冷凍

ここ数日、北海道知内の生牡蠣の瞬間冷凍を試みていました。

昨年、マイナス55度の壁を破って、液体をドライアイスの温度近くに下げることができたので、その威力を牡蠣でテストしていたのです。

計測ではマイナス65度ですが、実際はまいなす75度近くあると想定しています。

生きた牡蠣の殻を除いて身だけにし、真空包装して液体凍結庫に漬けてみました。凍結時間は5秒でした。

これは液体窒素を噴霧する窒素凍結よりも50~60倍速い時間です。

牡蠣瞬間冷凍

マイナス75度瞬間冷凍

 

驚異的な速さですねえ・・。

そこで今度は解凍してみました。

解凍の仕方は2種類。袋ごとぬるま湯に漬けて半解凍してあとは冷水に落として完全に解凍する方法。もう一つは終始冷水で解凍する方法です。

いくらかぬるま湯解凍のほうがいいように感じましたが、明確には差が出なかったように思います。

これは牡蠣自体が小さな個体ですので、あまり差が出なかったのかもしれません。

知内産牡蠣

牡蠣を解凍した写真

 

その後、生のままの牡蠣と、冷凍解凍の牡蠣を二つ並べて試食会をしました。試食するスタッフにはどちらが冷凍かを教えていません。

結果は、3人とも「どちらが冷凍かわからない」でした。

生牡蠣

                  解凍した牡蠣を盛りつけたところ

 

さてさて、これが成功したらどうしたかったのかですが、実は活牡蠣と変わらない冷凍を作って、剥いたあとの牡蠣の殻を添えて販売したいと考えているのですよ。

こうすることによって、盛り付けも映えますし、実際食べても活と変わらない美味しさですから、飲食店さんにも喜ばれるんじゃないかと。

 

【函館市国際水産・海洋総合研究センター】

今日は、一昨年に完成した、函館市国際水産・海洋総合研究センターを訪問しました。

未来大学や、函館水産試験場、北海道大学大学院水産科などが施設で研究をしています。施設の中には海底を探査するロボットなども展示されていました。いろいろ施設の概要や、建物を案内していただき、私たち企業にも非常に協力的に迎えてくれました。

函館市国際水産・海洋総合研究センター

函館市国際水産・海洋総合研究センター

函館市国際水産・海洋総合研究センター

館内には、海洋都市構想などの案内も

海洋探査ロボット

海洋探査ロボット

説明を受けたり、私たちの取り組みを説明している内に、来月開催の、年に一度のシンポジウムに招待していただくことになりました。

むつ研究所、函館水産試験場、未来大学、北海道大学の教授たちの成果発表の会です。

津軽海峡の環境変動観測、海洋短波レーダーによる東部津軽海峡の表面流モニタリング、大型実験水槽を用いたイカ類の繁殖生態に関する研究や、北大FSC生態系変動解析分野の研究開発概要、スマートな操業を目指したイカ釣り漁船のリアルタイムモニタリングなど、内容もさまざまです。

特にイカの生態に関する発表は楽しみです。私たちの商品開発のヒントにもなります。

国際的な水産・海洋に関する学術研究拠点として海洋都市構想を立て、産官学が連携してマリンサイエンス分野で世界をリードする研究成果や革新技術を生み出し、雇用の創出と産業経済の活性化に結びつけることが狙いだそうです。

2月17日にシンポジウムがありますので、また結果報告します。

 http://center.marine-hakodate.jp/

 

【魚の解剖から得たことpart1】

ここのところ、魚の血抜きをテーマに、あれこれ考えています。 魚は、活〆にする時、心臓を動かしたまま血抜きをしますが、締める位置は本当に適切なのか、締め方は本当にこれがベストなのか等、教わった知識ではなく自分で実際確かめ、根拠を明確にしたいので調べてみました。

それともう一点、生きてないと血抜きは出来ないのか?  ここは私たちが挑戦するところになるのです。すでにやってみたいことがいくつかあり、死んだ魚でも(新鮮なうち)血抜きをして提供できないかという実験です。要は、心臓が止まると血が抜けないなら、人口心臓なる役割をするものを作ってしまえっていう発想なんですよ。

いやあ・・とんでもない事を考えているのは重々わかっていますし、それが出来るのか実際やってみないとわからないのですが、とにかくいつもの如く好奇心の血が騒ぐのです。

昨日、鮭が入ったので、解剖してみようかと、ちょっと思い立って始めたのですが、これが結構勉強になったのですよ。

まず、魚の血管の構造と申しますが、どこからどこへ、どのように流れているのかを調べてみたいと包丁を入れました。 テストの仕方は簡単です。内臓や頭を落とさず、半身だけをパカッと取り外すという方法です。

手順はこうです。

①エラに傷つけないようにカマ下に切り込みを入れます。  

②次に、尻ビレから身に包丁を入れ、背骨に当たるまで切り込みを入れます。

③次に、背を同じように切り込みを入れます。すると、内臓もエラも傷つけずに半身だけを外すことが出来ます。    

④次に内臓だけに水をかけるように、よくお腹を洗います。 内臓がどうなっているのか、血管がどうなってるのかよく見えます。

血液は心臓から動脈を通って、静脈から帰ってきますので、その帰ってくる道筋と申しますか、体内のどこにどのように、どの順番で巡っているのかを見てみたかったのです。

まずは心臓の血管の繋がり方でしたが、これはしっかり確認できました。  出ていく血管、戻ってくる血管、いずれも確認できました。

魚の心臓と血管

正直、心臓が送り出した血は、体内、内臓など、どの順番で巡っているのかわかってません。

ただ、今、推測しているのは、心臓から真っ先にエラに入り、そこから酸素を取り込んで、脊椎を通って、筋肉のほうへ流れ、そして内臓を巡って 再び心臓へ戻ってくるのではないか・・。そんな風に仮説を立てています。

実は以前、2450万画素のカメラでエラの超接写をしたときに、大きく拡大すると、エラの一本一本に血管のようなものを発見したのです。

鮭のエラ

海水を取り込んでエラの血管から酸素を取り込み、体内に行き届かせているのでは?と考えました。ですから、心臓から送り出された血液は、まずエラへ行ってるのだろうと考えたわけです。

≪今回の解剖からわかったことと仮説≫  

・エラを繋いでいる軟骨の裏側に太い血管が流れていること。   

仮説:その太い血管から分岐してエラのヒダの一本一本に毛細血管が張巡らされている。あまりに血が多かったので、目視で確認できませんでした。次回はエラを取出し洗浄してから確認してみたいと思います。

・脊椎の裏側に張り付くように太い血管が通っていること。そしてその血管は軟骨でできた小さなトンネルの穴の中を通っている。

・脊椎の裏側に針の先ほどの穴が無数に開いている。その穴の中を毛細血管が通り、アバラ骨の一本一本の先まで血管が通っていること。それは両側の腹骨に通っている。腹骨の血管をつまむと、その穴から血が出たことで確認できました。

・いくつもの臓器がどこに配置されているかを確認。なぜここなのかを考えていました。

まあ、第一弾はざっとこんなところでした。 次回は一つ一つの部位を切り離して調べてみたいと思います。 海からの恵みは決して活魚だけではありません。鮮魚が圧倒的に多いわけですから、私たちとしては、その鮮魚や冷凍品をいかに品質よく届けることが出来るかにも挑戦したいと思っています。

【魚の解剖から得たことpart2】

さて、今回はブリの血管の仕組みを調べていました。 心臓から動脈に送り出された血管は、やはり鰓の鰓弓から鰓のヒダヒダ(鰓弁)に流れており、鰓弁で、二酸化炭素を放出し、酸素を取り込むガス交換をしています。 そこから脊柱に入り、脊柱を尻尾まで通る動脈と、内臓へ繋がる動脈に分岐しています。

内臓に張り巡らされた血管は解明できていませんが、脊柱からアバラ骨に向かう細い血管などは確認できました。    血抜きの目的は身に血が付かないことですので、内臓の血は調べる必要ないかと考えています。 要は、脊柱あたりの血と、筋肉に伸びている血を抜き取ることだと思います。

今回は、もう一点、血管を送り出す心臓の仕組みを解明するため、心臓を開いてみました。 魚の心臓は1心房1心室の構造をしていました。 心臓には、動脈に血液を送り出す白い円錐形の筋肉が付いており、動脈には血が流れるが、逆からだと流れないようになっていて、心臓に逆流しない仕組みになっていました。 また、心臓の内部は空洞になっていて、ポンプの役割をしています。

心臓が膨らんだ時に静脈から血を吸い入れ、縮んだ時に動脈に送り出されるようになっているのでしょう。

鮮魚から血を抜く作業もテストしてみました。 心臓の弁のところからポンプの役割をする道具で動脈側に押し出し、尻尾から返ってくる静脈から血を抜くことが出来ました。

身の細い血管の血を抜き取ることが出来ませんでしたが、手作業で簡単に抜けますので、手作業を兼ねて血抜きをした後、熟成させ、フィレにしてみました。 血を抜いた魚と抜いてない魚では明らかに違いがある事を確認しました。

今後も実験を継続してまいります。

新ブライン凍結

ここまで来ました。-65度液体凍結の世界 

マイナス65度のブライン凍結に挑戦していましたが、今年、完成しました。 実質はナイナス70度あると思いますが、あいにく工場にはマイナス70度を正確に計れる温度計が無かったので、正確な数値が計れるマイナス65度を計測結果としています。

さすがにマイナス65度となると、液体というより、シャーベット状の中に魚を入れるという感じです。

今までもマイナス55度ですごいなと思っていたのですが、実際テストしてみて驚いたのですが、また別世界の次元です。 マイナス65度というとどんな世界かと申しますと、例えばマイナス60度の気温に、熱湯を空高く撒くと、空気中で水蒸気が凍って煙幕のような状態になります。また、バナナで釘を打てる温度です。

それがマイナス65度の液体に直接浸けるのですから、これはもう驚異的な世界なんですよ。  液体は、空冷より千倍の保冷力がありますから、そのパワーは想像を遥かに超えます。

いやあ、あまりのパワーにスタッフたちが目を白黒させてました。  私もですが・・・。

今後は、商品を全てマイナス65度で凍らせていきたいと思っています。 早速、今開発しているブリのブロックカット冷凍をマイナス65度液体凍結機で作ってみたいと思います。

この冷凍機で魚を凍らせると、細胞に全く傷をつけることなく、軟化現象も極端に抑え、解凍してもドリップがゼロです。まるで今まで生きてたかのような状態です。

ブライン凍結

マイナス70度近い温度でフローズン状態になったブライン凍結機内。数秒で凍らせてしまう。 

水産新聞記事「熟成と脱水のタイミングを合わす」

水産新聞

渡島支庁発行プロ用厳選素材、南北海道食彩王国に掲載

雑誌表紙

南北海道食彩王国

北海道渡島支庁が発行する、プロ用厳選素材、南北海道食彩王国に掲載されました。

 

南北海道食彩王国

こちらの商品へリンク

掲載誌 渡島総合振興局サイトへリンク

 

 

 

プロ間マーケットプレイス情報掲載

私たちの技術

~プロ間マーケットプレイスより記事抜粋~ 

食ビジネスの達人

食ビジネスの達人技術

捕れたての新鮮な食材の持ち味を、そのまま料理に生かしたい――料理人ならば誰もが抱く願いだが、海産物の「捕れたての鮮度」を保って送り届けるには、鮮度保持や安全性、物流コストなど、さまざまなハードルがある。
(有)嘉楽の辻合明男さん(44歳)は、イタリア料理店のオーナーシェフとして20年間腕を振るったキャリアの持ち主で、7年前、奈良県から北海道内浦湾(通 称噴火湾)に面した鹿部町に拠点を移し、水産加工品の販売に乗り出した。
同社が扱う鮮度抜群のタコやイカは、品質はもちろん、コスト的にもプロの料理人を納得させる商品力を保っている。

奈良の料理人が、北海道へ移住して水産加工をスタート

「自分で水産業をやろうとは、夢にも思いませんでした」と語る辻合明男さんは、奈良県の出身。大阪のイタリア料理店で修業し、25歳で独立。奈良市の郊外にイタリアンレストランを開業した。同店はまだイタリア料理と言えばピザやスパゲティが主流の時代、本格的なコースが味わえる専門店として登場。その後もイタリア料理のパイオニアとして地元の人たちに愛され続け、今も現地スタッフが営業を続けている。

辻合さん自身、それまで北海道にはあまり縁がなかったが、元々好奇心旺盛で、素材についてとことん探求するタイプ。ある函館出身の常連客の「魚のことなら一度道南行って、食べて、感じてみなさい」という一言がきっかけで、現地へ出向くことに。そして――

「まずタコにびっくりしました。大きなミズダコで、一匹10~15kgある。関西にはほとんど流通 していません。とりあえず自社に送ると、仲間のレストランも送って欲しいと。これは面白い。どんどん広げていこうやないかと、移住して本格的に始めました」

鹿部産のミズダコは、刺身やカルパッチョなど生の料理はもちろん、焼くと甘味が出るので加熱調理にも向いている。中には足の吸盤の直径が2~3cmに達するものもあり、それだけを串に刺して「串かつ」にするなど、調理のバリエーションも幅広い。

代表取締役

辻合 明男さん

1961年奈良生まれ。25歳でイタリア料理の「かくれんぼ」を開業。

1998年より鹿部町へ移住し(有)嘉楽を設立。地元の浜市場10軒入札権を獲得し、タコ、イカを中心に水産加工業に着手。

 

企業プロフィール

企業名 (有)嘉楽

業種 卸・海産卸

代表者名 辻合 明男

所在地 北海道茅部郡

設立 1998年

安価な冷凍技術を独自に開発。調理の現場で「使える」価格に


しかし、せっかくのタコも活きたまま輸送すればコストがかかり、冷凍すると保存状態が悪くなる。鮮度よく届けるには、冷凍技術と物流の問題がある。「鹿部のタコ」が、それまで道内での消費にとどまり、本州以南ではなかなか出回らなかったのは、そのためだ。

「専用トラックで活きたまま送れば、物流コストが高くなり、高級店でしか出せない値段になってしまう。いかに質の高い冷凍品を作るか。それが我々の課題です」。

水産物を冷凍させる場合、0℃からマイナス5℃の温度帯をいかに早く通 過させるかが、重要なポイントとなる。最も氷の膨張率が高いこの温度帯をゆっくり通 過させると、細胞間の氷が膨張して細胞膜を傷つけ、それが解凍時にドリップの原因となり、旨味とともに流失してしまうからだ。これをクリアするには瞬間冷凍させるのが最適なのだが、専用フリーザーを導入するとかなりの設備投資が必要になり、また商品価格に跳ね返ってしまう。

「飲食業界も人材不足、人件費の削減等いろいろな問題を抱えています。そんな中で、他店にはない優れた食材をいかに料理に生かしていくか。品質だけでなく、コスト、安心・安全面 ……やはり使う側の立場に立って考えていかなければ。現場の条件に合わせた商品を作れるかどうか、チャレンジの連続です」
こうして辻合さんは、既存の冷凍庫に改良を加え、「瞬間冷凍に近い状態に加工できる技術」を開発。手頃な価格で「鹿部のタコ」を全国へ送り出すことを可能にした。

浜市場の入札権を取得。新たな加工品も続々登場

「イカのラウンド」(写真)

丸ごと冷凍した「イカのラウンド」は応用範囲が広く好評。

辻合さんが水産加工を始めたとき、最も苦労したのは加工・販売よりも「仕入れ」だった。

「函館近辺から室蘭まで、海岸沿いに小さな市場が点在しているのですが、市場によって入札方法が違って、全部憶えなければならない。仕入れには苦労しました」
地元の人たちは、新参者がいきなりセリに参加して相場を荒らすことを警戒する。ましてや遠く関西から来たと言うし、しかも異業種からということで、当初、周囲から「いったい何者??」という視線が注がれたのも無理はない。

それでも辻合さんは、何度も漁協へ足を運んで粘り強く説得。1年半の間に10軒の浜市場の入札権を取得した。中には、「新規参入者は16年ぶり」という市場もあるという。
見知らぬ土地で、新しい事業を立ち上げるには、地元の流儀を尊重しつつ、実績と信用を積み重ねて認められていく――そんな努力も必要なのだ。

仕入れ、加工、販売のシステムが整った2001年1月、フーズインフォマートに参加。他社にはない水産加工品が好評で、ホテル、レストランを中心に着実に販路を開拓し、今や取引の9割を占めるまでになった。
「取引のはじまりはメール。親交が深まったら年に一度は顔を出しに行きます。デジタルからアナログへきちんとつなげていく。フーズインフォマートは、パイプ役として一番頼りになる会社。信頼できるマーケットプレイスです」

イカの開きは解凍すると透明に(写真)

イカの開きは解凍すると透明に。

「鹿部のタコ」に続く、第二の主力商品として力を入れているのは、函館産のイカだ。「捕れたてのイカを活きたまま開いて、皮まで剥いて、キッチンで切るだけの状態に。ですから解凍すると透明なんです。『こんなイカ、見たことない!』と、びっくりされることも多いですね」

さらにイカを開かず丸ごと冷凍した「ラウンド」の提供も開始。刺身だけでなく、内臓も使いたいという顧客の声に応えて登場した新商品だ。

「活きたまま瞬間的に丸ごと凍らせます。内臓を取ってソースにして、イカの上からかける……レシピもこちらから提供しています。私も20年料理をやっているものですから、この商品をどう使ったらいいのか、アドバイスしながら北海道の商品を本州へ流通 させていきたい」 料理人の立場にたって開発した「イカのラウンド」はすこぶる好評。案内を送り、サンプル請求のあった顧客の90%は、取引につながっている。

現在は、活魚と冷凍加工品の二本立てだが、ゆくゆくはホタテやサーモンなど、道南の魚介類の持ち味を生かした加工品をメインにしたいと考えている。目指すのは「極めてシンプルに。素材の持ち味を殺さない加工法」。

「サーモン団子」を作るにも、ミキサーを使うとドリップが出てしまうので、包丁を使って刻んでいく。あくまでも料理の原点に立ち返り、アナログ的な技術から試行錯誤を繰り返していく。

「こんな加工品を作るのに、何千万円の機械がいる。だから無理……で終わっていたら何も生まれません。常に“お客さんの欲しがっているモノ・価格から商品を組み立てる”。これが当たり前だと思います」

取材記者:三好かやの

FOODS INFO MARTより

「食ビジネスの達人 売り手編 有限会社嘉楽 辻合明男」

マンモスも保管できる冷凍技術

鮮魚とは、新鮮な魚介類のことです。いかにしてその品質をおとさずにお届けできるか それが、私たちの誇りです。

スーパーにずっと並んでいた 魚や刺身のトレーのそこに赤い色をした液体(ドリップ といいます)がでていませんか。そして同時に生臭さもでてきていませんでしたか。これが一番 鮮度を落とす原因となるのです。

鮮度が落ちるとはどういうことでしょうか。一番の原因は、酸化です。鉄の棒を長い間置いておくとサビてきます。これと同じ事で魚の色がくすんでくるのは、魚が錆びてきている(酸化してきている)のです。これを防ぐ方法は、まず【真空パックにすること】 空気から遠ざけたんぱく質が壊れていくのを防ぐことができます。


鮮度を保つには、低温にすること。さらに温度は、低くければ低いほど程良い。


しかし北海道においてまだまだ冷凍技術が高いとはいえません。「とれたてを船上冷凍しました。」と書かれていても 魚をとって冷凍するということは、とても大変な作業です。ですからどうしても一度に大量にいれてしまうので冷凍庫の温度が上がってしまい、凍るのに時間がかかってしまいます。

実際に顕微鏡レベルでは、細胞内や細胞間にある水分が凍ります。水は、凍るときに【1/11】ほど体積が増えますから この氷結晶が成長して大きくなりすぎると細胞膜(組織)を破壊してしまいます。これを解凍しますと氷が溶けると共に細胞組織も溶け出すので それら栄養分が空気とふれて酸化し生臭さの原因にもなります。

つまり細胞内や細胞間にある氷結晶を小さくすればいいのです。氷結晶が一番大きく成長しやすい温度帯(0~5℃)をいかに早く通過させるかが重要な問題です。


キーワードは、【超急速冷凍】

イタリア料理専門店20年の歴史が作る

専門レストランの高度な技術が作る商品の数々。
海から捕る技術、そしてレストランの調理する技術が、さかなだマートの商品を生み出します。
本場イタリアで学んだ料理人、和食を極めた料理人、私たちのスタッフが最高の素材を最高の技術で作りあげます。
数十年の年月に裏打ちされた技術ならではできる商品を、自らの舌で、自らの心で感じてください。

 

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